前回まで、「ボイストレーニングを行う上での注意点」について書かせていただきましたが、今回はボイストレーナーの指導を受ける上での心構えについて書かせていただきます。
趣味で歌を始めるにしろ、プロのアーティストを目指しているにしろ、歌が上手くなりたいと思い、ボイストレーニングを始める事はとても効果的で正しい選択だと思います。
しかし、覚えておいていただきたいのは
「最終的に歌を上達させるのは自分である」
という意識をしっかり持っておいていただきたい事です。
もちろん、ちゃんとしたボイストレーナーの指導を受けているのであれば、その方はあなたの声の現状を把握し、最適なトレーニングを行い歌の上達へと導いてくれます。
しかし、ボイストレーナーとはあくまであなたの歌を上達させるサポートをする人間です。
分かりやすく例えるなら歌のお医者さんみたいな存在なのです。
あなたの声の問題点、改善点を専門家の視点から診断し、その時、その時にベストな薬(トレーニング)を処方していく。
そのようなイメージを持っていただければと思います。
という事は患者さん(歌が上手くなりたいと思っているあなた)自身も自分の現状や症状を理解し、治療(トレーニング)と向き合う必要性が出てくるのです。
ボイストレーニングを始めたばかりの頃は、知識も経験も少ないので何が問題で何が正しいのかを理解する事は少し難しいかもしれませんが、中級者以上になってくると必要な工程になってきます。
そして、自分はどんな声が理想でどんな歌い方をしたいかを自分の頭で考えて、ボイストレーナーとしっかりコミュニケーションし、日々の練習を積んでいく事があなたの歌を上達させる上でとても重要な事になってきます。
なぜなら、声を出す基本や発声の基本はどんなジャンルでも一緒なのですが、本格的なトレーニングに入ってくると声帯の使い方や共鳴のかけ方など歌唱法の種類は様々で、時として、Aというジャンルでは正解の発声法でもBというジャンルでは間違いという事も多々あるのです。
みなさんが想像しやすいジャンルで例えるならロックやポップスとR&Bとでは声帯の使い方、共鳴のかけ方、母音、子音の発音の仕方などがまるで違うケースがあります。
具体的に言うと、ロックやポップスでは高音部分で迫力を出す為にわざと喉仏を上げ、声帯の閉鎖を強める歌い方をするアーティストさんも多いのですが、R&Bの場合は吐息まじりの柔らかい発声が主流なため、ファルセットやソフトミックスボイスを多用する傾向が強くあります。
(※この内容に関しては「アーティストから見る発声方法の違い」で詳しく触れていますので読んでみてください。)
どの発声方法や歌唱法があっている、間違っているかではなく、あくまであなたがどんな姿を目指したいか?という事が重要になってくるのです。
もちろん、ボイストレーニングを深く勉強していくと様々な発声方法や歌唱法法を身につける事も可能なのですがまずは、一つのスタイルに絞り込んで練習していくのが上達の近道と言えるでしょう。
なので、「最終的に歌を上達させるのは自分である」という意識をしっかり持ち、自分の声としっかり向き合い、ボイストレーナーとコミュニケーションを取り、トレーニングを積んでいくという心構えをみなさんに持っていただきたいのです。
1982年(昭和57年生まれ)
アーティスト活動を続ける中、日本・海外流問わず様々なジャンルのボイストレーニングを習得する。
その後、日本では最大数のボイストレーナーを抱える大手ボーカルスクールの統括として働き、現場で生徒さんにボイストレーニングを教えるボイストレーナーへの指導も行う。
今まで指導してきた生徒数は300人を超える。